コラム
ままごと
人間関係はぐくむ道具
女の子も男の子も、ままごとが大好きです。
ままごとをしている子どもたちの姿には、それぞれの家庭の風景が映り、何ともほほ笑ましいものです。
時には息子が「ちゃんと野菜も食べんさい」なんて、
私とそっくりの口調としぐさをして、恥ずかしい思いをすることもありますが。
ままごとは、大人のまねです。
部屋には、子どものサイズに合った物を用意してあげたいものです。
使い勝手のいい高さのいすやテーブル、流し台などを置き、頭上には布を垂らして天井を少し低くすると、
そこはもう子どもにとって居心地のいい、ままごとの世界になります。
「お父さん。はい、お茶ですよ」「ありがとう」なんて会話が聞こえてきます。
ままごと遊びの中で、子どもたちは想像力を養い、コミュニケーションの取り方を学んでいきます。
それは決して親や大人から教えられるものではなく、真剣に遊んでいる時にこそ自然と身についていくのです。
コミュニケーションを取りやすく道具におもちゃを使うのは、
子どもだけでなく、高齢者福祉の世界でも同じです。
お年寄りにとって、おもちゃは一種の「活性剤」なのです。
デイサービスのレクレーション活動などにおもちゃを使うと、
「これ昔あったね」「こりゃあ面白い」と会話が弾み、
スムーズな人間関係をはぐくむきっかけになります。
リハビリ運動にも、おもちゃは生かせます。
こまを回して小さな玉をはじき、その玉が入った穴の目で得点を競う
チロリアンルーレットは、単調になりがちなリハビリに楽しみを与えます。
そのゲーム性によってわくわくする。
心の動きが指の運動を促します。
しかし、高齢者にとってのおもちゃの有用性は、まだまだ理解が行き渡っていません。
以前、老人ホームを訪ねたとき、入院患者の方からこんな声を聞きました。
「介護者から、できるだけ起きてください、と言われる。
だけど、起きていても何もすることがない。」
おもちゃは今や、子どもだけでなく、高齢者にとっても豊かな人間生活をはぐくむため、
もっと注目を受けてもいいはずです。